ある日、おばあさんが川で洗濯をしていると、白い子犬が入った箱が流れてきました。

シロ「クゥン　クゥン・・・」

子犬はふるえています。

優しいおばあさん「かわいそうに、いえにおいで」

やがておじいさんが、たきぎを背負って山から帰ってきました。

子犬はしっぽをふって出迎えます。

おばあさんからわけを聞いてお爺さんも言いました。

優しいおじいさん「だいじにそだててやろう」

ふたりは子犬に「シロ」と名前を付けて、子供のようにかわいがりました。

やがて大きな犬に育ったシロは重い荷物をちからいっぱい引っ張って、優しいふたりを助けるのでした。

あるとき、おじいさんが畑を耕していると、シロが袋をくわえて走ってきました。

そしておじいさんを山の方へ連れて行こうとします。

優しいおじいさん「よしよし。山へ行きたいのか。」

シロはどんどん山おくへ入って行きます。

やっと立ち止まると、おじいさんを見上げて

シロ「ここほれ、ワン！ワン！　ここだよ、ワン！ワン！」

優しいおじいさん「おやおや、ここを掘るのかい？」おじいさんはくわで土を掘り始めました。

するとカチリと音がして、ピカピカひかる大ばん小ばんがザクザク出てきたのです。

優しいおじいさん「うわ～！なんじゃこれは～！」

ふくろに入った、大ばん小ばんを見て、おばあさんもびっくりしました。

優しいおばあさん「こんなにたくさんのお金は見たことありません、シロはかみさまのおつかいの犬かもしれませんよ。」

優しいふたりはお金の使い方を考えました。

優しいおじいさん「ひとり占めしたらばちが当たるよ。困っている人にあげよう。」

その様子を、こっそり隣のおばあさんがのぞいていました。

隣のおばあさんはとんでかえると、おじいさんに教えました。

ふたりともとてもよくばりでした。

欲張りおばあさん「シロを借りて来て、わしらも大ばん小ばんを掘るんじゃ！村一番の金持ちになるぞ！」

欲張りなおじいさんはすぐにシロを借りにやってきました。

欲張りおじいさん「力持ちのシロに畑仕事を手伝って欲しいんじゃが。」

うそをついて、シロをなわで繋ぐと、引っ張って行きました。

欲張りなおじいさんは大きな袋をシロに結わえつけて山奥へ急ぎます。

欲張りおじいさん「さあ、おしえろ！大ばんはここか？小ばんはここか？」

シロ「ワンワン、ちがうよ」

欲張りおじいさん「ここか！」

欲張りなおじいさんは、よくききもしないで土を掘りました。

ところが、出てきたのは虫やゴミばかり。

おじいさんは怒って、シロを叩きました。

かわいそうに、シロはしんでしまいました。

優しいおじいさんがシロを迎えに来ると、欲張りなお爺さんは平気でうそをつきます。

欲張りおじいさん「シロは急に病気になってしんでしまったよ。埋めたところに木の枝をさしてきたぞ。」

優しいおじいさん「シロや、かわいそうになあ。」

優しいおじいさんが、おしえられた場所に行くと、なんと枝が太い丸太になっていました。

優しいおじいさん「シロや、これでうすを作って、家にもってかえるよ。」

優しいおじいさんとおばあさんは、シロを思い出しながら、そのうすでお餅をつきました。

ぺったん　キラリ！　ぺったん　キララ！

なんと、ピカピカの大ばん小ばんが、うすからこぼれおちてきました。

これを知った隣のおばあさんは、すぐにうすを借りに来ました。

欲張りおばあさん「うちのうすが壊れたから、貸しておくれ。」

そういって、さっさとうすを持って行ってしまいました。

よくばりなおじいさんとおばあさんは、少しのお米しか入れずにお餅をつき始めました。

すると、　ぺったん　ガラガラ！　ぺったん　ゴロゴロ！

うすから、ゴミやがらくたが飛び出しました。

欲張りおじいさん「こんなうすは灰にしてしまえ！！」

怒ったふたりは、うすを割ると燃やしてしまいました。

まもなくやってきたやさしいおじいさんは、涙をこぼしながら灰をざるに集めました。

優しいおじいさん「シロや。天国でしあわせになるんだよ。」

家に帰る途中、風で灰がまいあがりました。

するとどうしたことでしょう。

枯れ木についた灰が、花を咲かせたのです。

おじいさんは木に登って、灰をひとつかみ撒きました。

みるみる、あたりは花で染まりました。

シロ「ワン　ワン　・・・」

空の彼方から、嬉しそうなシロの声が聞こえてきます。

そこへ通りかかったとのさまは、満開の花に大喜び。

とのさま「これは見事。日本一の花を咲かせる、花咲かじいさんじゃ！」

ごほうびをもらって、おじいさんはみんなにご馳走しました。

よくばりなおじいさんとおばあさんも、ごほうびをもらおうと、灰を集めてとのさまの前まで行きました。

欲張りおじいさん「わたしも花を咲かせましょう！」

でも、枯れ木にのぼって灰を撒いても花は咲きません。

カンカンに怒ったとのさまは、ふたりを捕まえてしまいました。

欲張りおじいさん・おばあさん

「もう欲張りはやめます」

欲張りなおじいさんとおばあさんは、何度もあやまってようやく許してもらえました。

　　　　　　　　　おしまい